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心理学編【ゾーン — 相場心理学入門】マーク・ダグラス

投稿日:2021年5月1日 更新日:

私の知り合いで専業投資家として成功している方がいらっしゃるのですが、その方に「今まで一番役に立った本はなんですか?」と聞いたら即答で「そりゃ間違いなく『ゾーン』だ」と言われました。

テクニックではなく心理学の方が大事なのか、と最初はびっくりしましたが、私も実際に読んでみて「これを最初から知っていれば・・」と思う心構えがたくさん詰まっていました。

内容をよりわかりやすくシンプルに理解していただくために【心理学編】と【売買技術編】とに分けました。本記事の後は是非こちらもご覧ください👇

①ゾーンとは何か

「ゾーン」とは、恐怖心ゼロ、悩みゼロ、淡々と直感的に行動し、反応すること!

スポーツ選手に例えられることが多いですね。
野球で言えば、自分がバッターボックスに立った時にあれこれ悩んでいてはあっという間に「ストライーーーク!」です。

仮に大谷選手のバッティングフォームを真似したとしても、自分がゾーン状態に入っていなければ勝てません。

このように野球であれば、多くの人がそれを理解して日々厳しい練習に励んでいると思います。
しかし株式投資となると、途端に人々はナメ始めるのです。

「株は証券会社に口座を作ってお金を入れれば誰でも簡単に取引できる」
そう思っている人が大半でしょう。

たしかに、全くの初心者でも最初に買った銘柄がいきなりストップ高して大勝ちする可能性はあります。
しかし、それはいわゆるビギナーズラックに他なりません。

大谷選手のバッティングフォームを覚えたからと言って、今からアナハイムスタジアムに行って打席に立つようなものです。
全米が湧きますよ。

『ニートだった僕がバイトで貯めた100万円を株式投資で1億円にした方法』
のような本が世の中にはたくさん出回っているので、簡単だと思うのも致し方ありません。

しかしその本を読んだからと言って、実際に100万円を投資して1億円にするのは容易ではありません。

野球も株式投資も同じで、勝つためにはゾーン状態に入る必要があるのです。

著者のマーク氏は、ゾーン状態に入るためには

・ある精神状態を築く
・前向きに勝つ姿勢を養う

ことが必要だと言います。
これらについては後々述べていきたいと思います。

②投資で心理(メンタル)が重要な理由

その後あなたは1日100回の素振りを欠かさず行い、実際のバッティング練習では30本連続でホームランを打てるようになりました。あなたは身体的スキルを身に付けたのです。

さあ、今日は甲子園出場を賭けた県大会最終予選。9回裏2アウト満塁、あなたのチームは2-5でビハインドです。ここであなたに打順が回ってきました。ホームランを打てば逆転サヨナラ満塁ホームランで一躍ヒーローに。

あなたはこれまで行ってきた練習を思い出して「俺ならできる!!」と自信満々です。

しかし一方で、あなたはこうも思っていることでしょう。

・みんなが自分に期待している
・失敗すれば全部俺の責任
・仲間に迷惑をかける
・コーチに怒られる
・応援してくれてるみんなをガッカリさせる
・メディアで叩かれる

このように、優勝がかかる瞬間などで

A:いつも勝てる選手

B:勝てそうなのに負けてしまう選手

と分かれてしまうのは、試合中に何を考えているかが違うのです。それは

目の前の目的に集中する

ということです。これこそが身体的スキルの対をなす精神的スキルと言えます。

《精神的スキルの無さがミスを引き起こす》

つまり、何事も「恐れるな」ということを著者のマーク氏は主張しています。

「恐れる」ことで、何かと不利に作用するからです。

・恐怖に目がいき視野が狭くなる
・他の可能性を思い付かない
・他の材料を遮断する

このような状況に陥らないための特に重要な思考法としてリスクを定義することが挙げられます。
次の章で詳しく述べていきたいと思います。

【管理人のぼやき】
本書では
「勝つ姿勢」
といった言葉が多用されています。

③苦痛回避のプログラム

《リスクは常に存在する》

A:いつも勝てる選手

練習で30発連続ホームランを打てるスーパー高校球児でも、メジャーでホームランを打ちまくっている大谷選手でも、三振する可能性は毎打席必ずあります。

しかし相手がどんな球を投げてこようと、そして自分に何か悪い影響があるイベントが発生したとしても、結果を恐れることはありません。

目の前の目的に集中する

のです。そういった精神的スキルが、結果としてミスをする可能性が減らしているのです。

一方で

B:勝てそうなのに負けてしまう選手

は、相手ピッチャーを分析(次どんな球を投げてくるか予想するなど)して対策をします。なぜならば、そうすることでミスをするリスクが減らせると思っているからです。

しかし、どんなに相手のことについて分析したとしても、本番では何が起こるかわかりません。
例えば・・・

・突風が吹いてコースが変わるかもしれない
・相手ピッチャーのカーブが今日はエグいくらい曲がるかもしれない
・最高球速を更新して160km超えのストレートが来るかもしれない
・相手ピッチャーが初めて登場する選手に交代するかもしれない

そして、自分の状況についても何か変化が起きるかもしれません。

・ギックリ腰になったり、急にお腹が痛くなるかもしれない
・砂が目に入って視界不良に陥るかもしれない
・相手応援団の声援に圧倒されて監督からの指示を見逃すかもしれない
・交代後のピッチャーが苦手な左利きの選手かもしれない

さて、これを株式投資に置き換えます。

A:勝てる投資家

リスクは常に存在する。けっして消えない。

勝てる投資家は「リスクを減らしているから勝てている」のではないのです。
必ず「損を出したり」「買いのチャンスを逃したり」しています。
しかし彼らはあらゆるリスクを常に受け入れた上でトレードをしており、結果として勝っているということを認識しなければいけません。

【管理人からのぼやき】
勝てる投資家は全体の5%程度だそうです。
そして勝てる投資家に共通しているのが、大金を一度失っている経験があることです。たしかに日本の有名個人投資家の逸話を聞くと、決まって
「最初はやり方が間違っていて資産の大半を溶かしました」
といった内容が多い気がします!そのような経験から、思考に変化が現れるのですね。

B:勝てない投資家

リスクは存在するが、排除できる。そのために分析をする。

勝てない投資家は、適切な分析や取引ツールを使えば、リスクを『取り除いて』確実に勝てると考えてしまいます。分析の結果『たまたま』勝てたときは、その分析によってトレードのリスクが取り除かれたように勘違いしてしまうんですね。

しかし、《リスクは常に存在する》のです。

マーケットは中立だ。どの瞬間も唯一のものであり、どんな可能性もある。「何事も起こり得る」という信念を確立する。(=利益を出すためには次に何が起こるか知る必要はない)

そして損をした原因について

マーケットが自分を攻撃したりいじめてきている

と思い込みます。
しかし現実的には株価は

ただ陽線と陰線を繰り返しているだけ

なのです。
誰かがあなたをいじめるためにマーケットを支配したり阻害しているわけではありません。
株価の値動きは、すべて投資家の売買行動の結果であり、それ以外の何者でもありません。
ミスの原因のほとんどはマーケットの中にはなくて、すべて自分の心の中にあるということです。

それを理解しておかないと、最終的にはマーケットから退出を余儀無くされることでしょう。

《苦痛回避のプログラム》

勝てない投資家が株式を買う時は、

自分が正しいという確信を持って実行する。むしろ、勝つと確信したからトレードを仕掛けようとしている

のです。つまり、

そもそもリスクのある投資はしない、したくないと思っている

ということなのです。だから、リスクを前もって明確にする必要性がないと感じているのです。

自分の分析結果は正しく、そもそもリスクはない(と思われる)選択肢を選んでいるので、投資をした時点で他の選択肢は頭にないのです。

人間は正解を期待して行動する

「もしかしたら失敗するかも・・・?」
と思って行動する人は少数派でしょう。ほとんどの人間は、正解すると信じられることしか行動できません。

正解すると信じられるためには、情報を集めます。
痛みを和らげる情報です。逆に、自分の真実を裏付けない情報は脅威だと認定し、インプットしようとしません。

なぜこのようにリスクを避けようとしてしまうのでしょうか?

我々人間は、間違いに対してマイナスのエネルギーを持っているのです。
私たちの心は、身体的かつ精神的痛みを避けられるように設計されているのです。

その間違いを繰り返すことも恐れます。
日常生活でも、何か間違えるたびに、蓄積してきた苦痛を引き出してしまう。

「ああ、またダメだ・・・」と

私たちは小さい頃からそうやって教育されてきたのです。
小学校でのテストを思い出しましょう。

・全ての科目のテストで100点取ることを求められる
・テストの点が悪いと先生やお母さんに怒られるし、友達から馬鹿にされる
・なぜミスをしてしまったのか、反省と分析をする
・苦手科目を中心に勉強して、完璧な状態(全ての科目で100点)を目指す
・得意科目もミスなく確実に100点取れるように時間をかけて勉強する
・実際に努力すれば全ての科目で100点を取ることは可能だと知っている

どうでしょうか。勝てない投資家と一緒ですよね。
最後にB:勝てない投資家の特徴と、それを勉強に当てはめて表してみます。

⑴自分が正しいと確信を持てるまで分析すれば、次に何が起きそうかわかる。
→これだけ勉強したんだから、次のテストでは絶対に100点取れる!
⑵失敗するかもしれない。不安だ。損をしたらマーケットのせいだ。
→それでも100点取れなかったら、急に難易度が上がったせいだ。
⑶勝つためには、リスク排除の為の分析に時間と労力を費やす。
→苦手の歴史に一番時間を割いたし、年号を繰り返し書いて暗記した!
⑷勝てる確信を得られるまで考え抜いたのだから、損切りの逆指値を置く必要はない。そもそも下がる可能性があるものに投資しないから。
→滑り止めを受験する意味がわからない!だって自分は第一志望に絶対に合格するためにこの1年間勉強してきたのだから!

実際にこのような事例は日常生活の全て(特に受験、部活、就職など)において同様のものであったかと思います。

トレードにおいては、自分が信じているもの(本書では信念という言葉が幾度と出てくる)とは全く異なるものだと理解しなくてはならないのです。今まで培ってきた「ミスしてはいけない」という文化と投資のカルチャーは違うのです。(「医者や弁護士などが投資でうまくいかないことが多い理由はここにある」と本書では記載がありました)

まとめ

いかがでしたでしょうか?

「勝てる投資家になるための心理状態はわかったけど、じゃあ具体的な売買はどうやっていけばいいの?」

というジレンマへの答えは、詳しくは次回の記事で解説します。軽くネタバレをすると、
「自分の売買方法を設定してミスを犯す可能性を解消」
「ひたすら機械的段階に従ってトレードする」

です。

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