【書評・レビュー】インターバンク流FXデイトレ教本/小林芳彦 著

投稿日:2024年2月7日 更新日:

こんにちは、管理人のみっちー(@m_hayashi )です。
今回はこちらの書籍をレビューしていきます↓↓

「インターバンク(市場)」とは、「金融機関などの限定された市場参加者が資金の運用と調達を行う市場」のことを言います。(出所:株式会社時事通信社)

つまり個人投資家とは違い、プロ中のプロということですね!
そんなプロがやってきた手法を学んでいきたいと思います。

著者 小林芳彦氏とは

プロフィール

慶應商卒ということで私管理人の先輩になります。
協和銀行とは現在のりそな銀行です。その後外銀のクレディ・スイスに移られています。
外銀というと、本社のディーリングルームで働く頭脳派集団のイメージがありますが、本書によると、毎日飛び込み営業で新規開拓を中心にしていたそう。しかも20~30回訪問しても相手にされず、名刺と相場レポートを置いては帰るという営業を繰り返していたそうで、僕がいた野村證券とやっていることは何ら変わらなかったです。

インターバンクディーラーを形態別に分けると、まずは顧客取引を扱うカスタマーディーラーと、自己ポジションで裁量取引を行なうディーラーに分けられる。
P15

小林氏は顧客取引を扱う「カスタマーディーラー」業務を行っていました。顧客を獲得するために大切なことは「相場見通しをしっかり語る」こと、そしてそれが「当たる」ということによって信頼を積み上げることだと言います。

その相場見通しの対象となる期間は、一般にテレビのニュースでやるような「ドルは今後高くなる」といったものではなく、数時間以内の値動きだったそうです。

なのでまさに読者が求めているようなデイトレ、スキャルピング向けの内容となっています。
FXだけでなく株式投資の参考にもなると思います。

現在の活動

JFX株式会社というFX会社の代表取締役として、毎日YouTubeやX(旧Twitter)でその日の相場見通しを発信していらっしゃいます。
会社勤務時代と同じことを行っているとのことです。

JFX株式会社が運営するMATRIXTRADERでは、社長自ら口座開設者向けの情報発信を行っているとのことです。

JFXに口座を開設していれば、「本日の参入レベル」やリアルタイムで随時書き込まれる「マーケット速報」をチェックすることができる
P21

基本的な考え方

「ポジションの傾きで動く」

相場予測においては、常に相場参加者の気持ちを考えながら、その動きを見ることが大切である。自分がショートでエントリーしたら、すぐにロングのポジションをもっている市場参加者の気持ちになって、相場の動きを見なければならないということだ。
相手の気持ちになると、自分のポジションだけを考えていたらわからないような相場のポイントが見えてくる。

仮に自分が買いのポジションを取っている状態で含み益が出ていることを想定してみます。例えば、ドル円レート=100円でドルを買って、現在103円とします。すると何を考えるか。それは「どこで利食いをしようかな~」「どのくらい利益出たら満足するかな~」「次のキリのいい数字(105円)で売ろうかな~」です。

しかしここで著者が言っているのは、現在自分とは逆のポジションを取っていて、含み損を抱えている投資家のことを考えようということです。

他人の「不安心理」を利用せよ

これは為替取引に限った話ではないが、相場取引と人間心理は密接に関連している。相場の流れというものは長期的にみれば経済のファンダメンタルズによって形づくられているのだが、短期においては、ファンダメンタルズが直接に影響することはなく、そうした情報を元に行動する相場参加者の悲観と楽観という心理状態が反映されて形づくられている
したがって、自らは常に平常の心理状態を保ちながら、他人の心理状態によって動く相場を客観的にとらえ、うまくトレードしていくことが大切なのである。
P68

これも長年私が悩んでいたことです。利益成長=株価上昇とはよく聞いたものですが、「良い決算を発表したら自動的に株価が上がる」と勘違いさせてしまうワードチョイスです。私も投資を知った当初はかなり悩みました。しかし現実は、「株価を上下させるのは人間の売買状況による」ということなのです。決算発表を見て、多くの人が今の株価は割安だと思うから買う、だから株価は上がるのです。しかし、一般的には良い決算発表と言われる内容でも、多くの人が今の株価が割高だと思えば下落するのです。

他人の損切りは「蜜の味」

トレードに関していえば、まさに「他人に不幸は蜜の味」としていかなければならない。自分とは反対のポジションを取っている参加者が窮地に追い込まれれば追い込まれるほど、自分の利益は大きく伸びるからだ。
相場がいちばん大きく動くのは、損切りの動きに拍車がかかったときだ。売り手の損切りは、買い手にとって大きく利益を伸ばすチャンスになり、買い手の損切りは売り手にとって大きく利益を伸ばすチャンスとなる。まさに「他人の損切りは蜜の味」なのである。
究極をいえば、すべてのデイトレードにおいて、自らのポジションは、他人の損切りにぶつけながら利食いしていきたい。インターバンクで大きな利益を狙うディーラーはみな、そういう風に考えている。
(「はじめに」より抜粋)

例を挙げます。先ほどと同じ状況で、ドル円レート=100円でドルを売っているライバルを想定します。するとどう考えるでしょうか。おそらく、「104円まではなんとか精神的に耐えられるかな・・・」「でも105円まで行ったらさすがに損切りしよう・・・」などと考えるでしょう。

そう考えると、100円で買いポジションを持っている自分は105円で利食いするのではなく、105円から空売り勢の買戻しが入った後の106-107円あたりを狙っていこうという作戦になるはずです。

特に大口の投機筋(機関投資家)の動きを予測して動く

投機筋というのは金融機関やファンドであり、実需のカバーを除けばすべてが差益を狙うためのトレードだから、言ってみれば、買わなくても良いところを買っていたり、売らなくても良いところを売っていたりする。したがって、つくられたポジションは将来、必ず反対売買をしなければいけない。これが「マーケットのポジションが傾く」ということだ。
(「はじめに」より抜粋)

通常、上昇トレンド中は追随、つまり自分の買いでエントリーしたくなる。しかしここで言っているのは、投機筋がすでに多くを買っているパターンを想定しましょうということです。そのポジションはいつか解消、つまり大口の売りが入ってきます。また仮に相場が急変して下落トレンドに転じた場合、損切りの売りが大量に出る可能性があります。
それらを考慮して、本当に買いでエントリーするべきなのかを考える必要があります。

実はデイトレのほうがやりやすい

デイトレのような短期トレードは、長期トレードよりもむずかしいと思っている個人投資家は少なくない。しかし、これは大いなる誤解だ。
なぜ、このような誤解が生まれるのか。それは、「長期投資なら放っておいても大丈夫」というイメージが強いからだろう。これに対して短期トレードは、為替レートを常にチェックすることが必要なため、パソコンの画面からなかなか離れられなくなる。また、小さな値動きを狙って取引を繰り返すため、いかにも忙しい。
そういうことから、短期トレードはむずかしいというイメージがどうしても強くなるのだと思うが、実体はまったく逆だ。
P48-49

たしかに短期トレードになるほど売買頻度が増え、手間はかかる。だがどちらの方が結果として利益を残すことが簡単かという問いに対しては、「短期のほうが間違いなくやりやすい」と著者は言います。

短期トレードの方がトレンドとして捉えられる場面が多く発生し、順張りだけでなく逆張りで利益を狙えるチャンスが増えるからとのことです。

通貨ペア

必ずしも円を介在された通貨ペアでなくてもよい

取引する通貨ペアを選びときに注意しなければならないのは、とくに私たち日本人は、円を介在させた通貨ペア(クロス円)のみで考えてしまいがちだということだ。ドル/円、ユーロ/円というように、対円の通貨ペアのなかで、最も流動性が高いものは何か、という考え方をしてしまいがちだ。
P53-54

たしかにその通りです。無意識に円を絡ませた通貨ペアを選んでしまっていました。ではどの通貨ペアを選べばよいのでしょうか。

ではどの通貨ペアが良いか→ユーロ/ドル

私の個人的な考え方をいえば、初心者にはユーロ/ドルがベストだと思う。対円ではなく、ユーロ/ドルである点に抵抗感を抱く人もいると思うが、ユーロ/ドルの特徴は、何といってもチャートに対して素直に動く傾向があるということだ。慣れてしまえば、対円の通貨ペアよりも短期トレードに向いている
実は、通貨ペアのなかではユーロ/ドルが世界的に見てもいちばん流動性が高く、インターバンク間の取引金額も大きい
P54

それでも円絡みの通貨ペアを取引したい!という場合はどこがおすすめなのでしょうか。

円絡みの通貨ペアでおすすめは

他に流動性が高く、取引しやすい通貨ペアというと、ドル/円、ユーロ/円、ポンド/ドル、ポンド/円などがある。いずれも個人投資家には人気の高い通貨ペアだ。
P54

“円”絡みではないですがポンド/ドルもおすすめされているのですね。

高金利通貨は避ける

豪ドル/円を取引する人が多い。確かに、オーストラリアは高金利国だし、資源国通貨という側面もあるので、定期的に得られるスワップポイントが高いのに加え、通貨高が期待されることから、人気を集めるのもわかる。
ほかにも高金利通貨ということであれば、北欧通貨、東欧通貨、中南米通貨などが挙げられるが、実はこれらの通貨は短期トレードには向いていないので、注意したほうがよい。なぜなら、流動性が極端に低いからだ。
P63

流動性が低いとトレードに支障をきたすことがあるので、避けましょう。

24時間取引可能だが・・

おそらく多くの個人投資家の方は、何となく外国為替市場という単体のマーケットで、24時間ずっと取引が連続して行なわれているという認識で取引しているのではないだろうか。
しかし、これは大いなる誤解だ。
(中略)
確かに24時間取引は可能だが、その間、どの国において多くの参加者が取引しているかによって、「主戦場」は異なる。そして主戦場が異なると、マーケットのクセが違ってくる。したがって、連続した単一のマーケットと考えるのではなく、連続して取引することはできるが、どの国・地域のマーケットが主戦場になっている時間帯かによって、相場つきが大きく変わってくると考えた方がよい。
P55

私も誤解していました。24時間取引できるということで、日中しか取引できない株式市場と比べてサラリーマンが参入しやすいのがFXの特徴です。しかし、「時間が空いたからFXでもするか~」と安易に取引してはいけないのですね。

著者は、『アジア時間』を主戦場にしており、理由は「予測がやりやすいから」とのことです。

実践編

仕切りまでのイメージを固めておく

初心者の方は、ともすれば上がるか下がるかのどちらかを考えてエントリーするものの、どこまでいったら利食いや損切りをするのかというイメージを決めずにポジションをつくってしまうというケースが多いようだ。
本来は、なぜいまそのポジションをつくるのか、という理由(材料)があるわけだから、その根拠が崩れた場合には、損切りするなり利食いするなりしてポジションを閉じなければならない。ところが多くの人が、どこで利食いをするのか、どこで損切りするかというところまではきちんと考えていない。
P64

自分の都合や考え方とは切り離して考えなければいけませんね。

最もやってはいけないことは

デイトレのつもりで材料を判断してポジションをつくったのに、含み損を抱えた状態になったら長期のスタンスに変更してしまう
P67

ことです。いわゆる塩漬けですね。

他にレビューした書籍でも同様のコメントは多々見られますが、トレードで成功するためには秩序・規律が一番大切ということです。プロとして、デイトレでお金を稼いで食べていくんだ!という覚悟を持った人は、それをビジネスとして行います。ビジネスなので、ギャンブルとは違い、すべての行動には明確な理由が必要なのです。

ドル円トレードにおける利食いラインと損切りライン

東京時間で私のようなスタンスでドル/円のデイトレをするのであれば、利食いは35銭、損切りは40銭で、6勝4敗、というのが合格ラインのイメージである。
P23

・35銭×6勝=210銭
・40銭×(-4負)=ー160銭

210銭ー160銭=+50銭

というイメージです!

みなが強気のときは下がる

たとえば、市場参加者の多くがドルに対して強気だとしよう。誰もが「ドルは買いだ」と言っている。このような場合、みなが強気なのだから、相場は上がると判断するのが常識だと考えている人は多い。
ところが、実際の相場はそれとは逆に、みなが強気であるにもかかわらず、下がることが多いというのがプロの感覚だ。
P26

これは先ほどから出てきている「ポジションの傾き」に起因します。
つまり、「ドルは買いだ!」のレポートが出た今この瞬間の大口投資家のポジションを把握しなければいけません。既に多くのポジションを保有しているのであれば、あとは売りしかありません

逆にこれから起こりうる「強烈な売り」に備えなければいけません。

したがって、市場参加者の大半が、たとえばドル買いに傾いているなと思った時点で、自分のポジションに利が乗っていたら、そろそろ利食いをする機会を伺ったほうがよい。逆にまったくポジションをもっていない状態なら、様子を見るか、近々訪れると考えられるドルの暴落に備えて、ショートのポジションをもつようにする。
すでにポジションをもっているにもかかわらず、なかなか利が乗ってこないような場合は、早めにポジションを閉じておいたほうがよいかもしれない。
P28

重要指標前にポジションを持つべきか

FXにおける重要指標と言えば何といっても雇用統計です。株式投資にとっては決算発表と同じでしょうか。
決算跨ぎならぬ雇用統計跨ぎをしても良いのかについて言及しています。

基本的にプロの為替ディーラーは、重要指標が発表される前は、ポジションを整理したうえで、経済指標の発表を待つというのがセオリーだ。そして、指標が発表された直後に、プライスアクションを見ながらポジションを傾けてくるただし、あくまでもお祭りであり、大きく動いたとしても、それがトレンドになるというケースは、ほとんどないと考えておいてよいだろう。遊びで少しコミットするという程度なら問題はないが、ヤマをかけて、事前に大きなポジションをもつというようなことだけは、避けた方がよい。
P33

結論、雇用統計前にはポジションを整理(0)にし、その後の動きに乗ることは積極的にはしない方がよさそうです。

スキャルピングで使うテクニカル指標はこの2つ

1分足にボリンジャーバンドを重ねて、MACDとストキャスティクスを一緒に見ながらタイミングを計るとよい。
タイミングとしては、ボリンジャーバンドのふちに沿って上昇(プラス2シグマ)、下落(マイナス2シグマ)し始めたときに、MACDやストキャスティクスが交差したときである。
P47 COLUMN❶スキャルピングのうまいやり方について

私は今のところMACDやストキャスティクスを使ってスキャルピング(超短期トレード)をする予定はないのですが、いつかするかもしれないので参考までに載せます。

上昇していたものが反落し始め、プラス2シグマとプラス1シグマのあいだにある場合に、MACDやストキャスティクスが交差しそうであれば売る。その後、中心の21本もしくは26本移動平均線を越せるのか越せないのかはじっくり観察しなければならないが、それを超えるようならば、あとは下のマイナス2シグマに絡んだら利食う。
逆にマイナス2シグマからマイナス1シグマに上がってきたときに、MACDやストキャスティクスが交差しそうであれば買って、同様に利食う。
P47 COLUMN❶スキャルピングのうまいやり方について

1回に平均10銭×5回=一日トータル50銭を目標にするといいそうです。損切ラインは1回につき-20銭です。

ただし著者も基本的にはデイトレ派なので、上記のようなスキャルピング専用の手段は使わないそうです。

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